【渋さ知らズ・ヨーロッパツアー2007 48日目】

bousisensei2007-10-01


成田空港着→帰国
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 【冒険とは?】

1ヵ月半の旅を締めくくる飛行機の中で、この約50日を振り返り考える。
鬼頭哲ブラスバンド、次回公演のタイトルは「散歩と冒険」
ということもあって、1ヶ月半の海外生活の中で「冒険とは?」という問いに対する答えを見つけ出すのを、旅の中のひとつのテーマにしていたのだ。
車窓を眺めたり、街を歩いて常に「冒険とは?」に対する答えを探し続けたのだけど、意外な所に答えはあったのだ。
ロシアのカンスクのマーケットで日本人の老人と出会った話は前に書いたけど、次の日のライブに来てくれたのだ。
開演前に会場をうろついている時に、偶然出会う事ができたので、是非メンバーに紹介したくて楽屋に案内した。
そこで、その佐藤さんという老人がこれまで送ってきた人生を語ってくれたんだけど・・・
重すぎる。
その話がなかなか出てこない「冒険とは?」の答えにつながる物だった気がする。
「冒険」の目的は「どこかに行く事」では無いはずだ。
それこそ、コロンブスの時代なら「新大陸の発見」なんかがあったように、「冒険」の目的は「発見」なんじゃないだろうか?
今の時代、そんなに大それた発見はないのかもしれないけど、新しい何かに出会う事はあるだろう。
だとしたら「冒険」なんて大袈裟な事でなくても、日常の延長にある「散歩」の中でも、いくらでも「発見」はあるはずだろう。
毎日歩いてる道でも、新しい事に「気付く」って事があるはずだろう。
そして、その「気付き」が人間を「成長」させて行くんだと思う。
昨年出した「鬼頭 哲のふしぎな日常」という本の中でも、「人間が生きていく上で最も大切なのは成長することだ」みたいな事を書いたけど、結局「散歩と冒険」にはそのエッセンスが凝縮されているのではないだろうか?
で、さっきの佐藤さんの話に戻るんだけど、佐藤さんは18歳の時にカラフトで終戦をむかえて、そのままシベリアに連れてこられ、60年だそうだ。
今では年に1回は日本に帰っているけど、最初に日本に帰ったのは47年ぶりだったという。
80歳とは思えない凛としてハキハキと喋る言葉は決して多くはなかったけど、想像するだけでどれだけ壮絶な人生だったかがうかがえる。
次々に死んでいく仲間を横にして「絶対に死ぬものか」と生き延びる術を見つけ・考えた人生もまた「冒険」なんじゃないのか。
つまり「冒険」というのは「何かに気付き成長し続ける事」であり、「何かに気付き成長し続ける事」が人間に大切な事だとしたら、「冒険とは人間として生きて行く事」そのものなんじゃないだろうか。
旅に出る前や旅の途中で「元の暮らしに戻れるだろうか?」と、少々不安だった。
というのも、前回2005年のツアーの後、実際元の暮らしに戻らなかったからだ。
「新しい場所に行く事」が「冒険」だと思っていたのかもしれない。
「旅の宿題」の答えが出たのだから、家に帰ろう。
白いご飯を炊いて、温かい食事を作って、久しぶりに杉並の路地をウロウロして、旅の間に作った新しい曲を譜面に起こして・・・
また「ふしぎな日常」を再開しよう。

旅が終わって日常に戻っても冒険は続くのだ。