イヤになる

bousisensei2008-07-01


「ここ数年、あなたの中で変わった事は?」と聞かれたら、
「生きてるのがイヤになった」と即答すると思う。
これでは、あまりにも直接的なんで、少し補足がいるとは思うんだけど。
別に「早く死にたい」と思ってる訳じゃなく、もちろん寿命はまっとうするつもり。
ただ、いろんなニュースを見たり聞いたりすると、未来は「お寒い限り」で、この国で、この地球で「長生きしたいとは思わなくなった」って事。
歳を取る事がドンドン不利になっていく国政の中、異常気象について行け無い身体で、せいぜい歯止めの利かない環境破壊に落胆しながらの老後の人生なんて、どこが楽しみだ?
少子化云々も問題視されてるけど、何も明るい展望が無い未来に子孫を残したいなどと思う方がオカシイ。
人間だって動物だ。沈みかけた船や地震の前に逃げる野生動物と同じで「本能」がそうさせているのではないか。
自分より確実に未来を生きる事になるであろう子供に
「生まれてきて良かった」「生んでくれてありがとう」
そう思ってもらえないとしたら、無責任に子供なんか作れないよ。
子供や孫の「成長が楽しみ」なんて、ペットじゃないんだから先に死ぬ人間が軽はずみに言ってはいけない
幸い、今のままの出生率なら何年か後には日本の人口はゼロになるらしい。
人口が減る事によって、環境破壊は多少食い止められるのか、それともその頃にはとっくに北極の氷は無くなっちゃってるのか。
どっちにせよ、未来は何も楽しくないのだ。
30年、40年前にこんな時代が来るとは思わなかった。
それでも、あいかわらず呑気なラブソングや「がんばれ!」「がんばろう!」みたいな曲がヒットしている。
いったい何をガンバレというのか、悪い冗談みたいだ。
「せめて」と音楽に救われたい気持ちもあるのかもしれないけど、俺には違和感があるなぁ。
自分が感じている事をリアルに表現してこそ、っていうのを重視しているから、当然ちゃあ当然なんですけどね。
だからといって、投げやりで「捨てバチ」な音楽がリアルかっていうとそうでもないような気がする。
喜ぶでも悲しむでもなく「世界の終わり」を受け入れる。
そういった音楽をやりたいなぁ、と思っている。
そんな事を考えていたら、数カ月前にテレビから流れてきたPerfumeの「Baby cruising Love」を聴いて「これはこれは」と思った。

あくまで、最初はサウンドに「お?」と思ったんだけど、歌詞を調べて「う〜む」
それから、他の曲も聴いてみて、さらに「う〜む」と。
近未来をイメージさせるテクノアイドルユニットという事らしいけど、これまであった「イケイケ・ドンドン」とは一味も二味も違って、なにか寂しげな。
曲調もけっして「暗い」わけではないのだが。
「未来はそんなに楽しいモンじゃないよ」と言ってるような気がするのだ。
中には「ポリリズム」「チョコレイト・ディスコ」といった、アイドル王道的な曲もあるのだけど、プロデュース他全ての楽曲のソングライティングをしている中田ヤスタカ氏の「真骨頂」ともいえるのは、さっきも書いた「Baby cruising Love」や「エレクトロ・ワールド」「マカロニ」といった楽曲だと思うし「Perfumeがおもしろいな」と思えるのは、アイドルでありながら「夢を見させてくれない」ところにあると思うのだ。
「暗い」「明るい」ではなくて、もっと感情的な「憂い」という言葉がしっくり来るかもしれない。
憂いのアイドル。
たとえば、同じような若い女子がツルんで歌ってるグループといえば「モー娘。」なんかがすぐに思いつくわけなんだけど、つんく氏が作る楽曲は手放しに「気分は上々だ」「未来は安泰だ」といった物がほとんどではないか。
というか「今が楽しけりゃいいじゃん!」か?将来を考えないって、ある意味「現実逃避」だよな。
ところが中田氏の言葉選びは「将来にそんなに期待していない」と取れるニュアンスが多い。デカイふろしきを広げる事無く「自分で出来ることはせいぜいこれぐらい」という、ある種「諦め」からはじまって「でも」と進んで行くのだ。
期待はしていないけど、将来については考えている。これまさに「憂い」
曲についても、テクノというデジタルで「サウンド先行」な手法をとってはいる物の、おそらく中田氏はヒップホップ以降のダンスミュージックより、古いソウルなど「歌」をメインとした音楽を念頭に曲を組み立てているような気がする。
そんな「憂いのメロディ・メーカー」が作った楽曲が、今非常に気にいっていて、大いに共感できるのですよ。
何かを気に入ったり、好きになる事を「理由なんかない」と言う人もいるけど、俺は「そんなことは絶対ない」と思うクチで。
自分が「好きになった理由」を分析する事こそが、人に好きになってもらうモノを作る時に大いに役立つと思うし。

これなんか、全然テクノじゃないよね、普通に「良い曲」
コード進行は洋楽なんかでも使い古された珍しくもなんともないパターンなんだけど、そこに乗っかってるのが日本人が日本語でしか作りえないメロディー
「日本のソウル」ですね。
でも、これは「Perfumeにしては珍しい曲」ではなくて、全曲に共通する一番ベーシックな部分だと思う。