無題

bousisensei2009-02-05

「抜け殻」という程でもないのだが、細々した雑用やとてつもない緊張感から解放されてホッとしています。
その「とてつもない緊張感」のハナシ。
これは実際にプレイに対するスリルと、本来その場に「無くてもよい」実に個人的な音楽に対する「思い入れ」が同居したプレッシャーだったんだなぁ、という事に改めて気付く。
普段あまりここに「音楽のはなし」それも「思い入れ」みたいな事は書かないようにしているのです。
と、いうのも楽器をやるやらないに限らず、誰もが当然のように持っているものであって、あまり具体的に公言してしまうと初めて会う共演者やお客さんに「そうなんだ」という思い、いわゆる「先入観」みたいな物を持たれてしまうのではないか?という。
それは、あまりおもしろくないなぁと思うのです。
それでも、以前出した「鬼頭哲のふしぎな日常」という本に、ちょっとだけ自分が最も影響を受けたであろう音楽の事を書いたことがありまして(実際はページに「あまり」が出来てしまった為の穴埋め的コラムだったのですが)
昨日の録音でチューバの関島さんとご一緒させていただいたのですね、もちろんこれまでも何度か共演したことはあるのですが、その「思い入れ」の為か未だに「あの関島さん」なのです。
これも「もちろん」の話で、その他にも普段一緒に演奏させていただいております先輩ミュージシャンには「あの」がつく人は大勢いますけど・・・
今回は「特に」なのです。
関島さんは、当然のごとく「栗Qのメンバーである」という事で録音に参加しているわけですが、今回演奏した「栗Qのレパートリー」の中に関島さんの曲でCOMPOSTELAの頃からやってる曲があったのです。
で、その曲はとても静かな曲でもあるので、川口さんの仕切りで「少人数でやろう」という事になったのでですね。
ウレシイ事に、その「何人か」に選ばれまして。
他にはクラリネットの大熊さんやバイオリンの太田さんや・・・ようするに「あの」がつく人多数。
この時点で「うひゃ〜」ですよ。
で、曲が始まって一番最初のメロディを俺が吹く事になったのですが、オリジナルで何度も聴いたことがある関島さんが吹くイントロがはじまって・・・
そこで「ふーっ」と入ってくるメロディは、もうホントに何度も何度も聴いた「あのサウンド」であるべきな気がしてしかたがなかったのです。
たまらなくウレシイんだけど、同時に「俺か〜?」という思い。
さらに、ゆったりとした曲を「弱音での演奏」というテーマがあったので、ある人は音程であったり音量であったりと、全員なにかしらの緊張感を持っての録音だったのですね。
俺も調の関係でバリトンサックスの「苦手」な音がたくさん。さらに「小さな音」という、これまたバリトンで難しい事をやるという。
で、ワンテイク目に、名手の北さんが音を外してしまって。
トランペットとして結構なハイノートで「あの北さんでも」というぐらい、やっぱり難しい曲なのです。
「これは何度もできないな」という空気が・・・
というわけで、他の曲は何曲かOKテイクがあってその中から選ぶ事ができるんだけど、この曲だけはOKテイクがひとつしか録れなかったのです。
だから、プレイバックした川口さんが「う〜ん」となったら「お蔵入り」してしまう可能性も。
俺的にもホントは「もういっかいやらせて欲しい」という気はしたんだけど、もういっかいやったところで、そっちの方が良くなる保障は何にもないわけで。
それは全員が同じだし・・・
ま、川口さんも作曲者である関島さんも「いいんじゃないですか〜?」ってのが録れたことは録れたんで。
是非、CDにちゃんと収録されるといいなぁ、と思ってるのですが。
どうでしょう?
俺と同じような「思い入れ」がある人が、俺が吹くメロディを聴いて「違うんだけどなぁ」って事になるのか?
とか考えると、いまだ「緊張感」からは解放されていないとも言えるのです。