ウマいもスバラシイ

bousisensei2009-06-02

昨日の「センス一発!ザ・ジャーズー」とはうって代わって「たしかなテクニックに裏付けされた、ド・クラシック」とも言えるような・・・KITO,Akira BrassBand!(KABB!)のメンバーでもあるユーフォニアムの山田伊津美とピアノのセバスチャン・ヴィシャールさんのデュオコンサートを聴きに杉並公会堂に行ってまいりました。
で、上のタイトル。
いや、普段から思ってることなんですけどね。とにかく「ウマいがスバラシイ」ではないということで。
こういったコンサートのプログラムには出演者のプロフィールが事細かに書かれている事がよくありますけど、中にはその「慣例」に従う為に無理矢理書いているような場合も見受けられます。
たいした経歴でもない事を(まぁ事実なんでしょうけど)長々と書いていたり。
その点、山田伊津美の経歴はすごいんだもん。
日本の音大を首席で卒業、フランスに留学してあの有名なパリの音楽院を満場一致の最優秀で卒業、国際コンクールで審査員全員一致で1等賞・・・(まだまだ続きます)
その為に「どれだけ努力したか」ってのはあるとしても、もう「ウマくて当たり前です」と経歴に堂々と書いてある。
そこには何一つ「嘘偽り」は無い(ただしクラシック演奏家特有の「アー写」にはダマされます)とはいえ、相当勇気のいる話だと思う。
だって、絶対ヘタなことできないんだもん。
で、キチンと言っただけの事をやり続ける。
それだけでもスゴイのに、山田伊津美の一番スゴイところは「威張らない・天狗にならない」
「先生!」と呼ばれるのが大好きな世界にいて、実に珍しいタイプの人なのです。
ホントに自分に自信がある人だからこそ、謙虚になれるんだなぁ、と憧れるし尊敬してます。
カッコいいよね。
で、今日のコンサート。
おそらく全編にわたってオッソロシク難しい「超絶技巧」を要求されるような曲がならんでいたんだと思うんだけど。
まったく、それを感じさせない。
先日ここに書いた「腕前を得意気に披露」の正反対。
それどころか、カップルがタワイの無いおしゃべりをしているような、そんな「かわいらしいノロケ話」を聴かされているような・・・
下手すると、それは「見苦しい」となってしまうトコロなんだけど、けっしてそうはならず、演奏家としてお客さんに向き合っていたし、それが「二人で力を合わせて向き合おう」としている、なんとも微笑ましい「幸せのオスソワケ」のような音楽だったのです。
セバスチャンのピアノもキュートって言葉がピッタリな、俺は一度しか行った事はないんだけどパリのあの空気を背景に育まれたタッチなんだろうなぁ、と感じさせるゆったりとした音でした。
二人とも狂ったように難しい事やってるのに!だよ。
いや〜楽器がウマってスバラシイ!
でも、やっぱり「ウマかったからスバラシイ」じゃないんだよな。
「スバラシイ音楽」がそこにあったという。
ホント、感激したし、心から「おめでとう、ヨカッタね」と思った。
彼女はこれからパリに活動拠点を移してしまうんだけど、ちょくちょく帰国はするそうで、その時都合があえば「またKABB!やらせてください」って・・・
う〜ん、謙虚!こちらこそ、先生!
で、ふと思い出すKABB!のもうひとりのユーフォの「先生」
彼も「1等人生」を歩んできたものすごい経歴の持ち主だし、山田伊津美に負けず劣らずの謙虚な人柄を持ち合わせている。
そうやって考えると、KABB!には今日本人で1番と2番(順不同)のユーフォ吹きがいるんだなぁ。
テクニックは他にもスゴイ人はいるのかもしれないんだろうけどね「心から一緒に演奏したいと思える演奏家」の1位と2位。
幸せなことです。



(終演後、山田先生と一緒に写真を撮らせてもらったんだけど、非常に「残念」な、アー写のイメージをブチ壊してしまうような「ありのままの姿」が写っていたので、公開はヤメておきます)