この道

あと何回かな

江ぐち」がある三鷹の駅前まではいつも歩いて行きます。
理由は簡単、駅前は自転車を停める場所が面倒なのです。
裏の公園を抜けて「風の散歩道」なんてシャレた名前のついた玉川上水沿いの一本道をひたすら真っ直ぐ15分ほど。
この道をなんど歩いたことか。
夏の暑い夕方、鬱蒼と茂る川べりの木々にちょっとひんやりとした空気を感じながら、バンバン虫に刺されて歩いたり。
最近はほぼ中間地点の「むらさき橋」交差点にできたコンビ二で紙パックの日本酒を買って景気をつけながら歩いたり。
その全てが「江ぐち」に向かう大切なアプローチだったのです。
「今日は何食べようかなぁ〜」「あ〜早くビール呑みて〜」
ワクワクしながらも、のんびりと散歩するように歩く15分が、とても幸せな時間でした。
でも、今日は・・・昨日は「訃報」なんて書き方をしたけど。
なんというか「余命を告知された知人の見舞いに行く」ようで、なんか気が重かったです。
で、お店に着いて目に入るのは張り出された「余命の告知」

「あぁ、やっぱりホントなんだ」と。
いきおい良く扉を開けると「タクヤ」こと井上さんの「お、いらっさい!」といういつもの笑顔と元気な声。
なんかね〜「あと少し」ってわかってる患者さんが気丈に振舞ってるみたいで・・・ツライなぁ。
最近、思うのは「いらっさい!」の前に「お、」っていうのが付くようになったなーって事。これ、顔見て明らかに俺の事を認識して「来たね」って言ってくれてる。もう、最後の最後になっちゃったけどウレシイです。
開店間もない時間に行ったので、行列こそ出来てなかったけど、店内は満員。
かろうじて、空いてた席に座ったら隣にはビールの小瓶と「竹の子皿」をツマミに文庫本を読む・・・久住さんでした(久住さんもTwitterに「偶然」って話を書いてて、フォローしてる友人から「行って来たんだって?」とメールがすぐ来た)
あ〜なんだか、俺なんかよりズッと「江ぐち」に思い入れがある人と一緒ってのは良かったなぁ。それこそ「一番乗り」で来てたんだろうなぁ。
早速、俺もビール(大きい方)と「竹の子皿」を注文。
しかし、帽子・メガネ・ヒゲという同じアイテムを装着したツーショットがカウンターに並んでる姿は、ハタから見ると結構笑えただろうなぁ〜平日の朝11時からビール呑んでるし。
で、まぁボソボソといろいろお話してたら(妄想系のリアル「小説 中華そば江ぐち」の世界にクスクス笑ってました)ちょっと手の空いた井上さんが「すいませんね〜突然こんな事になっちゃって」と。
で、いろいろ事情を教えてもらいました。
若い方の橋本さんも、珍しくいっぱい話をして。
とにかく二人とも「ひとまず」という部分を語気強めに言ってたのが、わずかな希望に感じられました。
その後もドンドンお客さんが来て、あまり長居をするのも気が引けるんで迷ったあげく「大盛りもやし!」を注文。

普通のラーメン450円+もやし50円+大盛り50円でしめて550円。今時ですよ。
(今日はバタバタしてて写真撮れなかったんで、これは前回食べた「大盛り」です)
今日も美味かったー!ヨソでは絶対食べられない「江ぐち」という食い物だよ。
で、「ごちそうさまです!」とお勘定をして店を出る時、井上さんが「よろしくね!」と。
一瞬「ん?なんか変じゃない?」とは思ったけど「また来ます!」と店を後にして。
また、同じ「この道」を帰ります。
いつもなんだけど「今食べたばっかり」だし「お腹いっぱい」なのに。
もう「また、江ぐち食いた〜い」って考えながら歩いてる。
まだ、あと何回かは行けそうだから大丈夫だけど。
ホントに「最後に行ける日」の帰り道。
なにを考えながらこの道を歩くんだろうなぁ。


あはは、やっぱり久住さんも書いてます
江ぐち、行って来ました。 : クスミの後悔日記2
平日の昼間にラーメン屋でビール呑んで、長編のブログ書いて・・・ってなぁ。

小説 中華そば「江ぐち」 (新潮OH!文庫)

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