仕掛け人

さて、ワタクシ一応プロフィールなどに「作曲家」と書いてますとおり曲も作ります。
その中でいつも思ってるのは、聴いた人がすぐに覚えられるような。シンプルで耳障りの良い。
もっと言ってしまえば「なんてことない」曲を作ろうとしてます。
で、あくまでもこれは「聴く人」を対象とした・・・言い方は悪いけど「素人さんには」ぐらいに思ってたんですけど。
先日、ワタクシの楽曲を演奏するライブをプロデュースしてくれた照喜名くんが、その時の準備の話をブログに書いていたのですが・・・
(→GetFunked! 闘うジャズユーフォニアム奏者 照喜名俊典 楽譜作り
読んで思わず「ニヤリ」というか・・・別にイジワルな意味じゃなくて。
それ以上に「へ〜」という驚きのような感想。
だって、照喜名くんは音楽の専門家だし、俺なんかより「音楽学歴」はズーッと高くて。
別に隠すつもりはないんだけど、俺がやってる「小ざかしいこと」なんかは全部「お見通し」だと思ってたわけです。
まぁ、それがわかっていようといまいと、演奏してる人までもが「シンプル」「簡単」と思っていたってのは実にウレシイ話ですね〜
ただ一応、俺にも照喜名くん言う所の「仕掛け」に対するこだわりがあって。
仕掛けは「その部分に注目を集める」ではイカンと思うのです。
あくまで、メロディーというか楽曲全体が進行していく中で、それが「気持ちよく耳に届く為の仕掛け」であるべきという。
これは、ドラムの「フィルイン」にも同じ考えなんですけど。
よく、フレーズのおしまいに「、」や「。」を付けるようなフィルを入れる人がいますよね?
「なになにしました!」みたいな。
フィルってむしろ「次のフレーズへの弾みや勢いをつける」ポジションにあるべきだと思うのですね。
それこそ「ところで」みたいに話題を変える時の「前置き」みたいなポジションであったり。
とにかくフレーズの「ケツ」じゃなくて、次のフレーズの「アフタクト」として機能して欲しいのです。
これみよがしな「キメ!」じゃなくて、あくまで「サラリ」と。
で、これが「できる・できない」ってやっぱりドラマーの楽曲に対する理解度みたいな部分の占める割合が重要で、ちゃんと「先々」を見据えていれば自然と「前置き」みたいなフィルが叩けるし、ただ単に「乗っかる」ようなドラムを叩いてると「付けたし」みたいなフィルになると思うのですね。
以前、これも照喜名くんにKABB!の「デモ音源」に関してドラムやパーカッションが「事細かに」入ってる事について、ちょっと不思議そうに聞かれたことがあったけど・・・まぁ、音源作るのに時間がかかる俺に対して「そこまで凝ったものを作らなくても」って事だと思うのですが。
ついついドラマーがその時の「フィーリング」でやってしまいがちなフィルインだけど、管楽器と同じぐらいに「アンサンブルに参加してる」という意識で・・・ラッパやサックスが譜面と違う音を吹いたらそれは「間違い」になってしまったりするわけで・・・「フィルイン」を「好きなことをやっていい場面」だと思って欲しくない、という。
「ここのブリッジの部分は管楽器がロングトーンで伸ばしてるから、ドラムはスネアの16分音符4拍でクレッシエンドして次の頭にドーンとつなげて」とか「やって欲しいこと」があるわけです。厳密な「一音一音の指定」とまでは言いませんが「気分でやられちゃこまる」って部分はデモ音源の時点でキッチリ伝えておきたいわけです。
話しがズレちゃいましたけど「その部分に注目を集める仕掛け」が好きじゃない理由。
たぶん、これは俺が楽器を始めて「プレイヤー耳」で音楽を聴くようになった最初の頃が「フュージョン・ブームだった」ってのが大きいかもしれない。
フュージョンにもいろいろあるけど、特にそのころ流行ってたのは「技工派」というか「馬鹿テク」みたいなバンドがもてはやされていて・・・あれはもう「仕掛けを聴かせる為の音楽」だもんなぁ。
ファンの興味もメロディーというか楽曲にはなくて「いかにスゴイことをやってるか」だったり。
俺はそういう音楽を聴くと、話の本筋の部分はボソボソとしゃべって「〜しました!」っていう部分だけハッキリ言われてるみたいで・・・
誤魔化されてるような気になるのですね。「大事な部分をちゃんと言え!」と。
たいして難しくもないことをあたかも「スゴイこと」みたいにやるポーズってのはモチロン好きじゃないけど。
「難しい事を涼しい顔でやる」ってのもあんまり好きじゃないし、当然「俺スゴイことやってます」なんてこれみよがしに言うのもイヤだし・・・
でも、いざ「仕掛け」っていうのがあって、それを意識すると上記のどれかになってしまうと思うのですよ。
と、なるとですね〜「仕掛け」は聴いてる人にも演奏する人にも「ないもんだ」と思わせたらいいんではないか?と思うのです。
「誰も仕掛けに気付かない仕掛け」ってのが作れたら大成功なわけです、俺的には。